多くの参拝者が目当てにする「お松明」ですが、本来は観光用のショーではありません。練行衆が二月堂に上堂する際、足元を照らすための「道明かり」として道童(どうどう)と呼ばれる従者が掲げる実用的な灯火です。
通常の日(1日〜11日、13日)には、長さ約6〜8メートルの松明が1口ずつ、計10本上がります。一方、クライマックスとなる3月12日夜にのみ登場するのが、重量約60〜70キログラム、長さ約8メートルにも達する巨大な「籠松明(かごたいまつ)」です。根元にカゴ状の竹細工が施されたこの特大松明が次々と舞台欄干を渡り、激しい火の粉を撒き散らす光景はまさに圧巻の一言に尽きます。
現場を訪れた参拝者の間では、「火の粉を浴びるとその年は無病息災で過ごせる」という信仰が古くから伝わっています。ただし、12日の混雑は極めて激しく、夕刻前には二月堂下の広場が入場規制となり、数時間立ち止まったまま待機することになります。防寒対策を怠ると早春の底冷えに体力を奪われるため、周到な準備が欠かせません。