ネット上の考察やファンの間では長年、「渚カヲルは無条件でシンジを愛し、自己犠牲を払う聖人である」という解釈が一般的でした。しかし、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でシンジ自身がカヲルに向かって突きつけた言葉は、その美談を覆す鋭い洞察に満ちていました。
シンジはカヲルに対し、「カヲル君は父さんと似ている」「僕を幸せにしようとしてくれたけれど、本当は自分が幸せになりたかったんじゃないのかな」と語りかけます。
カヲルが目指した「シンジの幸福」とは、シンジ自身の本当の願いではなく、「シンジを幸福に導く救済者としての自分」を成立させるための目的でもありました。相手の心境や成長を無視し、自らが敷いたレールの上で一方的に幸福を与えようとする姿勢は、碇ゲンドウが碇ユイを取り戻すために世界を犠牲にしようとしたエゴイズムと同質のものだったのです。