ヨーロッパ諸国の多く(ドイツ、オーストリア、フランスの一部など)では、公的な水質基準をクリアしており「飲んでも衛生上の危険はない」とされています。しかし、実際に現地を訪れた日本人が水道水を飲んで激しい胃痛や下痢に見舞われる事例が後を絶ちません。その根本的な原因は、細菌ではなく硬水と軟水の違いにあります。
水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を示す「硬度」において、日本国内の水道水は大部分が硬度50mg/L前後の「軟水」です。山が険しく河川の流路が短い日本は、雨が降ってから短時間で海へ抜けるため、地中のミネラル分をあまり溶かし込みません。一方で、石灰岩層が広がるヨーロッパ大陸では、地下水が長い年月をかけて大地を循環するため、硬度が200〜400mg/Lを超える「非常な硬水」になります。
硬水に豊富に含まれるマグネシウムは、医療現場で下剤(酸化マグネシウム)としても使われる成分です。普段軟水に慣れ親しんでいる日本人の腸に高硬度の水が大量に入ると、浸透圧の関係で腸管内に水分が引き寄せられ、浸透圧性下痢を引き起こすリスクが高まります。衛生的に清潔であっても、日本人の体質にとっては「刺激が強すぎる」という物理的な制約が存在するのです。