Wondering why おニャン子クラブの音楽はなぜ色褪せない?モータウン歌謡の革新性を徹底解説 implies? Read our breakdown with up-to-date information.

当時のポニーキャニオン(キャニオン・レコード)の制作陣が投入した予算と音楽的リソースは、現代の基準から見ても破格のものでした。おニャン子クラブ本体および派生ユニット、ソロ楽曲のサウンドを支えたのは、日本音楽界の頂点に君臨する作曲家・編曲家たちです。

後藤次利が持ち込んだ「攻撃的ベース」とロック・ファンクの融合

おニャン子クラブのメインコンポーザー・アレンジャーとして多数のヒット曲を手掛けた後藤次利は、もともとサディスティック・ミカ・バンドなどの活動で知られる日本屈指のベーシストです。彼がアイドルソングに持ち込んだのは、従来の歌謡曲の伴奏という枠を大きく逸脱した、ベースが主役級にうねる攻撃的なファンク・ロックサウンドでした。

シンセブラスが華やかに鳴り響く裏で、チョッパー(スラップ)奏法を交えた複雑なベースラインが楽曲のボトムを強固に支える構造は、当時のアイドルファンだけでなく、楽器を演奏する音楽ファンをも驚かせました。ボーカルの拙さをカバーするどころか、あえて無機質さや素人っぽさを残したボーカルと、超絶技巧のバックトラックを衝突させることで、ニューウェイヴ的な中毒性を生み出していたのです。

山川恵津子の仕事にみる「緻密なコーラスワークと転調の魔法」

もう一人、おニャン子クラブ関連のサウンドを語る上で欠かせない巨匠が、女性アレンジャーの草分け的存在である山川恵津子です。2024年6月に発売されたコンピレーションアルバム『編曲の美学 山川恵津子の仕事 PONYCANYON編』(ポニーキャニオン)でも大きくフィーチャーされた通り、彼女が小泉今日子やおニャン子クラブ(および渡辺満里奈、新田恵利などのソロ・ユニット作品)で披露したアレンジ技術は、文字通り「匠の仕事」と呼ぶにふさわしい完成度を誇ります。

山川恵津子の編曲における最大の特徴は、以下の3点に集約されます。

  • 色彩豊かなコードワーク:単調になりがちなアイドルポップスに、ジャズやフュージョン、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)のテンションコードを惜しみなく投入。
  • 緻密なコーラスアレンジ:メンバー自身の声の重なりを計算し尽くし、時に自らもコーラスに参加することで、キャンディーズなどの昭和アイドルグループから受け継がれる華やかなハーモニーを80年代流に再構築。
  • ドラマチックな転調とストリングス:イントロからAメロ、サビへと向かう過程で自然な転調を織り交ぜ、少女たちの繊細な心情の揺れをサウンドスケープとして描写。

当時のレコーディング現場の証言やライナーノーツを紐解くと、週単位で新曲が制作される過密スケジュールの中で、アレンジャーやスタジオミュージシャンたちは「いかに最新鋭の洋楽サウンドや高度な音楽理論をアイドルソングの中に密輸するか」を競い合っていました。つまり、おニャン子クラブの楽曲は、日本のトップクリエイターたちによる贅沢な音楽的実験場だったのです。