筆者が実際に北海道根室市の納沙布岬や、長崎県対馬の比田勝(ひたかつ)港、沖縄県与那国島を取材した際、東京などの大都市圏にいては決して体感できない「国境の手触り」に圧倒されました。
肉眼で見える異国の生活と、政治が引いた冷徹なボーダー
納沙布岬の北方館に設置された望遠鏡を覗くと、貝殻島の浅瀬に群がるカモメの群れや、海上に浮かぶロシアの監視ブイが息遣いまで伝わるような距離に迫ります。かつてその海で自由にコンブを採取していた元島民の方々の「あそこは我が家の庭先だった」という述懐を聞くにつけ、3.7kmという数値が持つ政治的・歴史的な重みを痛感せざるを得ません。
対馬の港で交わされるハングルと日本円
一方、対馬北部の比田勝港では、定期航路が活発な時期には街の案内標識の大半が日韓併記となり、ドラッグストアや飲食店には免税手続きを求める韓国人観光客で溢れかえります。「福岡に行くよりも釜山に買い物へ行くほうが早いし安い」と語る地元住民の日常は、海洋国家日本が決して隔絶された孤島ではなく、海を介して大陸と直結している事実を雄弁に物語っています。
【プロの結論】「一番近い国」の認識が個人の世界観を決定づける
地理的な最短距離を知ることは、単なるクイズの正解を覚える作業にとどまりません。私たちは普段、地図帳を上(北)を上にして平面的に眺めがちですが、視点を日本海やオホーツク海、東シナ海を中心にした「逆さ地図(環日本海諸国図)」に移すと、日本列島がユーラシア大陸の縁に沿うように張り巡らされた巨大な弓状列島であることが鮮明に浮き彫りになります。
日本に一番近い国を考える際は、「領土問題の現実を見据えるならロシア」「平和的な相互往来と市民生活なら韓国」「海洋安全保障と南西防衛なら台湾」というように、多面的なレンズを持つことが肝要です。これら3つのフロンティアを意識することで、日々の国際ニュースの背景にある摩擦や協力のダイナミズムが、格段に立体的に見えてくるはずです。