三山ひろしさんと奥さんの出会いは、まさに演歌界の伝統と覚悟が交錯するドラマそのものでした。25歳で高知県から単身上京した三山さんは、名歌手・松前ひろ子さんのもとへ弟子入りを果たします。そこは、松前さんの夫であり『男はつらいよ』の主題歌などを手掛けた偉大な作曲家・中村典正(山口ひろし)氏の自宅兼事務所でもありました。
弟子から家族へ|愛を育んだ「付き人」時代
上京後、三山さんは師匠宅に住み込み、運転手、荷物持ち、掃除や買い出しといった過酷な付き人修行に明け暮れます。その師匠宅で事務所の裏方として奔走し、慣れない東京生活で苦闘する三山さんを陰ながら支えていたのが、松前ひろ子さんの次女でした。
日々の業務を共にする中で自然と惹かれ合っていった二人ですが、三山さんにとって相手は「絶対的な師匠の愛娘」です。一歩間違えれば破門になりかねない禁断の恋であり、三山さんは並々ならぬプレッシャーを抱えていたと振り返っています。
「結婚を前提に」覚悟の直談判と義父母の反応
2009年に『人恋酒場』で念願のプロデビューを果たし、歌手として独り立ちの足がかりを掴んだ三山さんは、ついに師匠夫妻へ交際の事実を打ち明け、結婚の許しを乞う決意を固めます。「結婚を前提にお付き合いをさせてください」と頭を下げた三山さんに対し、義父となった中村典正氏と義母の松前ひろ子さんは、怒るどころか温かくその覚悟を受け入れました。
誠実に修行を務め上げ、嘘をつかずに歌道へ邁進してきた三山さんの人間性を、師匠夫妻は何年も間近で見極めていたのです。二人は2012年に婚姻届を提出。しかし、当時はまだ演歌界の若手ホープとして売り出し中の重要な時期だったため、ファンや業界への影響を考慮し、結婚の事実は公表されませんでした。