時透無一郎のキャラクターアークにおいて、アニメ制作スタジオufotableによる追加描写の功績は極めて大きいと言えます。原作漫画ではテンポよく進む展開に対し、アニメでは彼の視線の揺らぎや吐息、光の陰影に至るまで入念なアニオリ(アニメオリジナル)演出が施されました。
特に反響を呼んだのが、『柱稽古編』における炭治郎とのやり取りです。原作では簡潔に描かれていた第一関門の稽古において、アニメでは炭治郎の到着を心から喜び、パッと表情を輝かせる無一郎の姿が詳細に描かれました。さらに、隊士たちと打ち解けるきっかけとなる紙飛行機飛ばしのシーンは、アニメで大幅に膨らまされた名場面です。
かつて自分を閉ざしていた少年が、青空に向かって紙飛行機を飛ばし、炭治郎と競い合いながら屈託のない笑顔をこぼす――。この一連のオリジナルカットは、「記憶を取り戻した無一郎は、本来であれば14歳相応の無邪気な少年である」という事実を視覚的に強調する、極めて意図的な演出でした。過酷な戦いを控えた束の間の日常を描くことで、彼の人間的魅力を倍増させることに成功しています。