『明日も』の歌詞を深く読み解くうえで欠かせないのが、楽曲誕生の引き金となったJリーグ・川崎フロンターレの存在です。川崎総合科学高等学校のデザイン科で結成されたSHISHAMOにとって、川崎市はアイデンティティそのものと言える場所でした。
楽曲制作当時、宮崎朝子さんは父親に誘われて等々力陸上競技場へ川崎フロンターレの試合を観戦しに足を運びました。それまでサッカーに詳しかったわけではない彼女が衝撃を受けたのは、ピッチで戦う選手たち以上に、客席で声を枯らして飛び跳ねるサポーターたちの姿でした。
「普段は会社や学校で理不尽なことに耐えている人たちが、週末のスタジアムでヒーロー(選手)の姿を見てエネルギーをチャージし、また月曜日からの日常へ戻っていく」。この光景を目の当たりにしたことが、歌詞の核となる「週末のヒーロー」という概念を生み出しました。
| 歌詞の象徴的フレーズ | 込められた意味と背景 | 宮崎朝子の視点・制作意図 |
|---|---|---|
| 月火水木金 働いた | 終わりの見えない平日の労働や学業の閉塞感 | キラキラした日常ではなく、誰もが抱える「平日の重み」を冒頭で直視させる |
| 痛いけど走った 苦しいけど走った | 報われないかもしれない中で足掻く泥臭さ | 無責任な「頑張れ」ではなく、傷つきながらも前に進む人間のリアルな描写 |
| ヒーローに自分重ねて | 川崎フロンターレの選手とサポーターの投影 | 「推し」や「憧れの存在」が、生きるための活力になるメカニズムの言語化 |
特に注目すべきは、サビ前に配置された「痛いけど走った 苦しいけど走った 報われるかなんて 分からないけど」という一節です。一般的な応援ソングであれば「走れば必ず夢は叶う」「努力は報われる」と結論づけがちですが、宮崎さんは決してそのような綺麗事を書きませんでした。
報われる保証などどこにもない。それでも、週末に見たヒーローが泥まみれで走る姿を知っているから、自分もまた月曜日の朝に靴紐を結ぶことができる。この徹底したリアリズムこそが、『SHISHAMO 4』という名盤の中核を成し、後に川崎フロンターレのチャント(応援歌)としてスタジアムに響き渡る理由となったのです。