学校教育の現場で「どうしたの?」の模範解答として長年教え込まれてきた「What's the matter?」。文部科学省の学習指導要領に基づく検定教科書にも頻繁に登場するこの表現ですが、英米圏のネイティブスピーカーに実際の使用頻度を尋ねると、意外な答えが返ってきます。結論から言えば、このフレーズは日常的に頻繁に使われているわけではありません。
言語学的な語源を遡ると、「matter」は「問題」や「事態」を意味し、ニュアンスとしては「何か問題でも生じたのか」「何が原因で取り乱しているのか」というやや硬く、事態の重大性を問いただすトーンを含んでいます。そのため、親しい友人が少し疲れた表情を見せた程度で「What's the matter?」と声をかけると、言われた側は「えっ、私そんなに深刻でひどい顔をしている?」と身構えてしまうケースが少なくありません。
現代の日常会話においてこの表現が自然に機能するのは、以下のようなごく限定的な状況です。
- 子どもが急に大声で泣き叫び始め、母親が「一体何があったの!?」と駆け寄る場面
- 同僚が青ざめた顔でパソコンの前で頭を抱え、緊急のシステム障害や重大なミスが疑われる場面
- 明らかに身体の異変(激痛や呼吸困難など)を訴えている人を介抱する場面
このように、「What's the matter?」は単なる気軽な声かけではなく、「重大な異変に対する詰問・究明」に近い響きを持つことを理解しておく必要があります。