「愛してる」を意味するこのジェスチャーは、国際的に「ILYサイン(アイ・ラブ・ユー・サイン)」と呼ばれています。そのルーツは、北米を中心に広く使われているアメリカ手話(ASL:American Sign Language)の指文字にあります。
一見すると複雑な暗号のように思えるかもしれませんが、種明かしを聞けば驚くほど論理的でシンプルな構造になっています。「I Love You」というフレーズの頭文字である「I」「L」「Y」の3つの指文字を、ひとつの手で同時に表現した合体サインなのです。
- 「I」の指文字:小指だけを真っ直ぐ立てる形
- 「L」の指文字:親指と人差し指を直角に広げてアルファベットの「L」を作る形
- 「Y」の指文字:親指と小指を立てて広げる形(ハワイのシャカサインに近い形状)
これら3つの形を掌(手のひら)を相手に向けた状態で重ね合わせると、自然と「親指・人差し指・小指の3本が立ち、中指と薬指が折れ曲がる」というおなじみのフォームが完成します。
手話の歴史を紐解くと、このサインは1900年代初頭からアメリカのろう学校(聾学校)の生徒たちの間で自然発生的に使われていたという記録が残っています。それが全米、ひいては世界へと爆発的に認知を広げる転換点となったのが、1970年代後半のアメリカ大統領選挙でした。当時のジミー・カーター大統領が、聴覚障がいを持つ支持者たちに向けて演説の壇上からこのILYサインを掲げたことで、メディアを通じて一般大衆にも「声を出さずに愛と連帯を伝える世界共通のピースフルなジェスチャー」として定着したのです。
現在では、日本の手話コミュニティでもアメリカ手話からの外来表現として広く浸透しており、言葉の壁や聴覚の有無を超えて、瞬時に好意とリスペクトを届ける非言語コミュニケーションの代表格となっています。