調査の過程で、サリー機長を最も追い詰めたのがフライトシミュレーター検証の結果でした。事故当時の飛行データ(FDR)を再現し、コンピュータおよびシミュレーターで操縦を行ったところ、「ラガーディア空港への反転着陸」も「テターボロ空港への緊急着陸」も、複数回にわたり安全に成功してしまったのです。
さらに追い打ちをかけるように、テレメトリーデータ解析により「左エンジンは完全停止しておらず、わずかにアイドリング状態の推力を維持していた可能性がある」という暫定報告が突きつけられました。データ上は「川に降りる必要はなかった」という結論が導き出されつつありました。
この過酷な事実の対比を整理したのが以下の検証タイムラインです。
| 検証項目 | シミュレーター初期結果 | 実際の現場状況(サリー機長) |
|---|---|---|
| ラガーディア空港への生還 | 着陸成功(計算上可能) | 高度不足により市街地激突の危険が極大 |
| テターボロ空港への針路変更 | 着陸成功(計算上可能) | 滑空距離が足りず届かないと直感・判断 |
| パイロットの反応時間 | 0秒(鳥衝突と同時に反転操作) | 状況把握・再始動試行・マニュアル確認が必要 |
| エンジンの稼働実態 | データ上は微小推力残存の疑い | 引き揚げ後の現物調査で内部完全破壊を確認 |