「SUSHI食べたい」の生み出した熱狂は、単発の企画にとどまりませんでした。ファンの間で「食べたいシリーズ」と呼ばれるフード×ダンスミュージックの系譜は、その後もORANGE RANGEのライブシーンにおいて重要なキラーチューンとして進化を続けています。
その筆頭が、ガールズロックバンド・赤い公園と共演した際に披露された『MISO食べたい』です。寿司を平らげた後に欲しくなる「味噌汁」をテーマにしたこの楽曲は、リスペクトと悪ノリを兼ね備えたアンサーソングとしてファンの喝采を浴びました。
さらに近年では、日本のソウルフードであるカレーを題材にした『CURRY食べたい』へと派生。夏フェスやワンマンツアーの現場では、イントロが鳴った瞬間に何万人ものオーディエンスがハンズアップし、一斉に巨大なコール&レスポンスを巻き起こす定番の光景が定着しています。観客の生の声を集約すると、「頭を空っぽにして踊れる最高のカタルシス」「2000年代の青春だったレンジが、今も最前線で尖った表現を続けているのが嬉しい」といった、長年のリスナーならではの深い共感が浮き彫りになります。
【プロの結論】「真面目な悪ふざけ」がネット時代を生き抜くための教訓
なぜORANGE RANGEのフードソングは、一過性のネタで終わらず長年愛されるのでしょうか。社会心理学的視座から見れば、本作は「現代の過剰な情報社会におけるデジタル・デトックス」の役割を果たしています。
意味性やタイアップの文脈に縛られた現代の音楽シーンにおいて、「寿司が食べたい」という本能的かつ純粋なメッセージは、リスナーの理性を軽やかに飛び越えます。完璧に作り込まれたトラックメイキングを土台にしつつ、ビジュアルと歌詞で徹底的に崩す――この高度なギャップこそが、ネット社会で消費され尽くさない普遍的なエンターテインメントの条件といえます。