From major highlights to background context, get a complete picture of 石原裕次郎の遺作『北の旅人』病床レコーディングの真実と最後の歌声の全貌 in our latest feature.

1987年2月、ホノルルで敢行されたセッションは、後に音楽関係者の間で「奇跡の2日間」と語り継がれることになります。現地に赴いたのは、作曲を手掛けた弦哲也さんをはじめとする限られたスタッフ陣でした。弦哲也さんは裕次郎さんのキーや体調を考慮しながら、ギター1本でメロディの最終確認を行い、裕次郎さんの喉の負担を最小限に抑える細心の配慮を重ねました。

当時の裕次郎さんは、長時間立ち続けることすら容易ではない体調でした。それにもかかわらず、マイクの前に立つとスッと背筋が伸び、かつての映画スターとしての圧倒的なオーラが蘇ったといいます。第一声が発せられた瞬間、ブースの外にいたスタッフ一同が息を呑みました。そこにあったのは、病に伏す人の声ではなく、低音の豊潤な響きと哀愁を帯びた、紛れもない「石原裕次郎の歌声」そのものだったからです。

過酷な体調の中、裕次郎さんは『北の旅人』のみならず、自らの生涯のカーテンコールともいえる名曲『わが人生に悔いなし』などを含む楽曲を、わずか2日間のセッションで奇跡的に歌い上げました。集中力が途切れれば命取りとなる極限状態で発揮されたプロフェッショナリズムは、立ち会った者すべての心に深く刻まれました。

項目 詳細データ・史実 歴史的背景・意義
録音時期・場所 1987年2月/米国ハワイ州ホノルル 現地別荘に特設機材を持ち込んだ病床レコーディング
作詞・作曲 作詞:山口洋子/作曲:弦哲也 昭和歌謡の黄金期を支えた作家陣による渾身の書き下ろし
同時録音楽曲 『わが人生に悔いなし』ほか 人生の集大成を総括するメッセージ性の強い遺作群
シングルリリース 1987年8月10日(没後リリース) 1987年7月17日の逝去直後に発表され、日本レコード大賞特別栄誉歌手賞を受賞