『逃げるは恥だが役に立つ』という物語の根底には、既存の家族観や社会制度に対する批評精神が流れています。その象徴的なエピソードが、物語序盤で描かれた「結婚式」に対するスタンスでした。
一般的な恋愛結婚であれば当然のように期待される華やかな結婚式や披露宴。しかし、合理的な雇用契約としてスタートした2人にとって、多額の費用と労力を要する挙式は「リスクとコストが大きすぎる無駄」として徹底的に排除されます。親族への報告も、伝統的な結納や盛大な披露宴ではなく、両家が顔を合わせる最低限の食事会で済ませる選択を取りました。
世間体や社会的な「普通」に縛られて挙式を強要する周囲に対し、みくりと平匡は「自分たちにとって本当に必要な形式とは何か」を徹底的に言語化していきます。結婚式という記号的なイベントに依存せず、日々の生活設計や家事労働の分担、そして雇用契約書という対等な対話を通じて信頼を積み上げていくプロセスは、多くの視聴者に「形式よりも実質的なパートナーシップの尊重」を気付かせる契機となりました。